2.根っこんな森への一歩ずつの実験

(1) 現在の地球上では、「にんげんファースト」主義が支配しているかな思います。人は、エネルギー循環や、物質の循環を考える時、どうしても人が便利なことだったり安心なことだったりを前提にして政策や事業を考えてしまいます。でもほんとうは、地球規模で平等という観点から捉えると、地球上に誕生しているすべての生物が平等であるべきではないでしょうか。もちろん、その中でも生物間の殺し殺され、生かし生かされ、助け合いながら騙しあいながらの命の平等になります。

(2) また、いまのところ、生物平等の考え方になっても、人が地球上で最も優位な存在、つまり科学技術や医療技術を武器(守り)にしたピラミットの頂点であることに変わりはないと思います。でもほんとうは、他の生物と対決し支配しようという生き方ではなく、他の生物に敬意をはらい、他の生物と語らう生き方になれば、地球上でこれからの生きる方針が違ってくると思っています。そして、エネルギー循環や物質の循環が真に正常な,バランスのある「いきものの地球」に近づいていくと思います。

(3) そうお気づきのように、生物平等の考え方(1)や 他生物に敬意をはらう生き方(2)は、人間にとって、便利ではない(不便な)世界になったり、物質的に豊かな生活ではなくなるかもしれません。ただ、物質循環やエネルギーバランスが地球規模で崩れかけている現在、この地球でおきている、人間のいのちを脅かす、様々な異変や恐怖からは少しずつ逃れられるようになるかもしれません。

ここでは、根っこんな森への実験を(ほんとにちょっとずつですが)考えていきます。 上記の考え方や生き方に立った、根っこを切らない植樹方法の開発や、増え続けるシカへの対策法、海の森につながる川の森についても、仮説〜実験〜提案したいと思っています。

https://sites.google.com/view/nekkon-na-mori/根っこんな森

私たちの想い

 日本人にとって木材は、おそらく,毎日の暮しのなかで最も手になじむ素材であり、今後も利用し続けるでしょう。

 生物材料としての木材には、すでに見る触るだけでも ぬくもりが伝わりますが、さらに自在に曲げられるようになったらどうでしょう。

 木材を熱湯や,薬品につけて、曲げるのではなく,生きているスギやヒノキが持っている能力を最大限に活かして曲げて、もっと、みぢかな存在にしたい。

「曲がるスギ材」 はそんな考え方から生まれました。

 スギ材は真直ぐだから美しい、かちっと組んでいくという概念から、曲がって美しい,曲げて楽しいという、完全に新しい素材になり、しかも、煮沸したり、スチームしたりしてないので、色は美しいまま、香りはよいまま、スギ材の利用用途や、デザインの多様性に 対応できるようになりました。

 より多用途なのに「曲げられるスギ材」は,人類がこれまで作った中で,最も安く,最も長い長さで「曲げられる 無垢の スギ材」です。

 私たちは最初から建築用材への対応を念頭にいれていました。建築用材なら,日本各地の人工林で成熟した大量のスギ材に 高い付加価値をつけ,多くの消費を生むことができます。

 直線で構成された「家」に住む  動物  は人間くらいでしょう。事実 家庭で使っている 直線・平面的な構造材よりも湾曲材は強度をあげるためにも好都合です。

 従来の工法では,直線や平面をつなぐ際に 高度な接続技術を使用し,重くなりますが,カーブをもった構造材では,柱と壁が統合されます。  湾曲構造材の画期的な性質のひとつです。

 かつて,日本列島は「いきものたちの森」で覆われていました。森の中では生物達が「殺しあい」「切り詰めて」「助け合い」「逞しく生きて」きました。これらのエネルギー循環や物質循環により,絶妙なバランスが保たれていました。

 ところが,国土の70%を占める森林の8割以上が人工林(二次林を含む)に姿を変えました。その殆どがスギやヒノキなど住宅に使いやすい針葉樹を植林した「畑」です。 

 畑では,土壌が増えずに痩せる一方で,雨水 を蓄えることができません。ひとたび大雨が降ると根こそぎ流動します。大量の流木が被害を拡大させます。花粉被害も ニホンジカ被害も。終息の見通しがたちません。

 そこで,日本各地の人工林で成熟したスギ材を 建築用材として利用し、できることなら少しずつ生きものが集う森にかえしたいと考えたのです。

「曲げられるスギ材」は,曲げるからと言って,曲げわっぱのように,木目が細かくきれいに並んだ,高級な「天然スギ」を使う必要はありません。 間伐材でも、節が入った材料でも曲げていきます。

 これまでの歴史のなかで、堂々と  が入っている曲げものはなかった,究極のエコと 付加価値を 追求したのです。

 生きた細胞の伸縮力を 潜在的な能力として引き出し,それを新たな形状とするという発想から,節やあて材も使うことができたのです。

「曲げられるスギ材」この発想は、実に「当然」だったから、気づかなかった大きなポテンシャルを持っています。

 私たちの生物を見つめるアイディアは、ここまでシンプルでここまで扱いやすいのに、ここまで可能性のある素材を作ったのです。

荒井 一成

https://sites.google.com/view/nekkon-na-mori/曲がるスギ材/私たちの想いまとめ

1.曲がるスギ材をつくる・活かす 実験

 新しい素材は、樹木(たとえば人工林のスギ)が生育環境で備わっていた生物的な変形特性を引き出す方法でつくられます。伐採・製材後、乾燥前のおいしそうな帯状の板を、柾目や板目にかかわりなく、温めることもなく、支持体の形状に従って、あたかも私たちが筋肉のストレッチをするように、繊維間をゆっくり伸ばしながら、位置をずらしながら変形させていきます。すると、節があっても、穴があいていてもきれいに曲がっていきます。

 曲げられた素材は、もちろん、スギ材そのものの「香り」と「艶」と「響き」のままです。熱を加えてないから、香りや艶、リラックスの成分が飛んでいくこともありません。煮込み用の水槽もいらないから素材の長さに制限はなく、曲げられる長さも無限大(製材できる最大の長さ)です!

 そしてさらには、その形状に乾燥させた後に、曲率半径を自在に変更させることもできます。バネのように伸び縮みする不思議なスギ材です。

 日本各地の人工林で成熟したスギ材や放置林のスギ材を、このバネのように伸び縮みする不思議なスギ材に変えて、趣味の領域から工芸領域、家具や内装領域から建築構造部材の領域まで、曲線、曲面を楽しむ木材として利用していただければ有難いなと思っています。

https://sites.google.com/view/nekkon-na-mori/曲がるスギ材

根っこんな森の実験室 の目的

 宇宙人がみても奇跡としか思えない素晴らしい環境の中にある地球。いきものが育むために安全な環境にあります。その地球の中でも日本列島は、外国人が見ても、いきものが育むためにびっくりするほどふさわしい、素敵な環境にあります。

 ところが、緑豊かなはずの日本列島も、けっこうピンチです。TV番組でもよく「緑豊か」「大自然」と呼ばれてしまう「人工林」は、いきものの住か(すみか)としてはどうでしょう? 「街路樹」はどうでしょう? 材料を生産する「畑」だったり、往来空間の「飾り」だったりではないでしょうか。そこには植えられ生かされている樹木という存在だけで(いつ倒れるかわからないし)、自然環境や生態系には直接つながっていないようにみえます。

 そこで、本実験室は、生態系がつながるために必要な、根っこが張り巡らされた本来の森を日本列島に少しずつでも蘇らせたいと考え、その手段として、
1.曲がるスギ材をつくる・活かす実験(人工林材を曲げてバネにして活用)、
2.根っこんな森への一歩ずつの実験(根っこを切らない植樹方法の開発やシカ対策法の考案)、
3.森と人をつなぐ楽しい木工の実験 (伝統にこだわらず、森に想いを馳せた木工術のご提案)
の3本の実験に取り組んでいくことを考えました。一歩ずつですが、広がり、根づき,楽しみながら、実現をめざします。

 ところで、ヒトは なぜ地球上に誕生したのでしょうか?

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